Michio’s Northern Dreams5「大いなる旅路 Endless Journey」
 
 

  「大いなる旅路」は2002年7月29日に第1刷が発行された。

 「いつの日か自分の肉体が滅びた時、
 私もまた、好きだった場所で土に還りたいと思う。
 ツンドラの植物にわずかな養分を与え、
 極北の小さな花を咲かせ、
 毎年春になれば、カリブーの足音が遠い彼方から聞こえてくる・・・
 そんなことを、私は時々考えることがある。」

 星野さんのお墓はどこにあるのだろうか。日本の実家?それともアラスカ?どちらなのだろうか・・・。
 星野さんの魂は、やっぱりアラスカにあるのだろう。
 アラスカの原野を思う存分飛び回りながら、心ゆくまでカリブーやムースや北極グマ達と一緒に行動するのだろう。
 クマが長い長い冬眠の夢から覚めた瞬間から、子グマを連れて餌を採りに行く様子、子グマたちが少しずつ大きくなって一人前の大人のクマになる過程をつぶさに見つめるのだろう。 

 「 カリブーは、極北の放浪者。
  ある日、ツンドラの彼方から現れ、
  風のようにツンドラの彼方へ去ってゆく、
  その行方を、誰も追うことができない。」

 カリブーは、どこから来てどこへ去って行くのだろうか?
 餌を求めて雪の季節には南の草原を求めて行動するのだろう。
 たくさんの群で行動するカリブー。
 一頭のカリブーが脱落して、狼に食べられる傍らで、母親のカリブーが一頭のカリブーを産み落とす。全体としては、頭数は変わらないけれど、その中にも生と死が内包されている。
 変わらないようでいて、自然はいつも静かに動いている。

 「私たち人間を含めた、
  目の前にあるすべてのものの存在は、
  はるかな時を越え、
  今ここに在る。」

 星野さんのテーマの一つである、時の流れ・・・。
 今ここにいる自分に至るまでの綿々たる生の流れの歴史。
 母・祖母・曾祖母・そのまた前の祖母と辿って行った先の、人類の最初の一人は、アフリカで生まれた人へと辿り着くのだろうか?

 「今、目の前に横たわるカリブーの骨は、
  ゆっくりと大地に帰り、
  また新たな旅が始まろうとしているのではないか。
  自然が、いつの日か私たちの想いに振り向いてくれるとは、
  そのことではないのか。
  自然はその時になって、そしてたった一度だけ、
  私たちを優しく抱擁してくれるのではないだろうか。」

  自分が死んで、土に還って行く時にだけ、自然は優しく抱擁してくれるのか・・・(^^;)。
  人間に与えられた命の時間はそう長くはない。限りがあるからこそ、はかなくそして愛おしいのだろうと思う。
  全ての者(物)は一体どこから来て、どこへ去って行くのか・・・。

  「私はいつしか、目に見えるあらゆるものは、
  地球という自然が再生している
  つかの間の表現物にすぎないのではないかと思うようになった。
  人間さえその例外ではない。
  植物が大地から顔を出し、
  再び土に還ってゆくように。」

  地球あるいは宇宙は一つの大きな存在で、それが形を変えて色んなものになっている。
  でも根元は一つである・・・、何となく納得できる気がする。
  自分は何者でどこから来てどこへ去ってゆくのかという、昔からの人類の根元的な問いに対する一つの答えかもしれない。

 

  2002.10.12

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