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僻村塾記録

平成15年度第4回僻村塾 湯川豊さん 「物語の力」         H15.7.12

 4月より東海大学文学部教授。
 17日に第129回芥川賞・直木賞の選考委員会があり、読売新聞の「芥川賞直木賞の重み」という記事のインタビューを受ける。両賞の起源は、文藝春秋を起こした菊池寛が、盟友の直木三十五(昭和9年没)、芥川龍之介(昭和2年没)を偲んで作る。
 きっかけは雑誌の賑やかしになればいいということだったが、審査は絶対に公正にするということで始まった。
 芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学(エンターテイメント・娯楽小説)という区分けだが、受賞作品は前者は10万部、後者は30万部の本が売れる。現状で1万部売れる純文学作家はいない。

 昭和34年石原慎太郎は「太陽の季節」で芥川賞を受賞したが、スキャンダラスな内容だったので、新聞の社会面に報道され、以下大江健三郎・開高健が引き続き受賞し、第二社会面に報道されるようになった。文藝春秋はこの号だけ50万部売れる。
 普通は小説を読まない人が芥川賞受賞作は読む。文藝春秋は文学と一般の世界を結ぶ窓口。
 池澤夏樹さんの芥川賞受賞作「スティルライフ」(中公)は10万部売れたが、第2作は8千部しか売れていない。
 直木賞の宮部みゆきは100万部売れる。直木賞は読めば楽しい・・・プロットあり。
 芥川賞で売れたのは、柴田翔「されど我らが日々」、村上龍「限りなく透明に近いブルー」が100万部売れる。

 物語・・・江戸時代の草紙物、平安時代の「源氏物語」
 19Cヨーロッパの小説 「レ・ミゼラブル」 ユーゴー バルザック → エンターテイメントに近い(プロットあり)
 「ダルタニアン物語」 デュマ、「カラマゾフ」 ドストエフスキー、「戦争と平和」トルストイ
 「二都物語」 ディッケンズ

 どうして面白くなくなったのか・・・小説の中から物語性を排除、言語的前衛的な実験をするフランスの傾向から日本にも影響
 純文学作家も面白くなければいけないと芥川賞受賞作家も考えている
 人間を考える道具 → 違う?
 村上春樹・・・芥川賞を受賞していない理由は面白かったから・・・。
 「海辺のカフカ上下」 50万部売れた。面白かった。30ページに渡る「文学界」のインタビューで「自分の小説の最大の苦心は物語り、読んで面白く人間の持つ闇に到達したい。」 

 大衆文化社会・・・小説の読者(ブルジョアジー・富裕社会→子弟を高等教育し、社会を支えて行く使命感を持つ人々)がたくさんいた。
 20C末色んな人々の楽しみ、大衆文化社会・・・携帯電話
 物語は本当に面白いメディアで、これを使って今の読者の魂を掴みたい。
 エスキモー・インディアンは文字を持たない口承文学。この口承文学の世界最古の物語は絶対に力があるはず。
 日本最古の物語は古事記で、712年藤原不比等の命により稗田阿礼の口承を太安万侶が編纂、大和朝廷を正当化するために作られる。
 各部族の持つ神話を全部集め、天皇家の傘下に置く。
 天皇家 奈良三輪山の三輪氏の伝説(神話)古事記にあり。
 三輪山の神社に祭られている神が三輪氏の祖先→神の一族である。
 1三輪山 三輪家の領している山に名付ける=意味づけ
 2三輪氏の発生 何故この土地にいるのか 土地と自分の一族を関係づける →物語

 京都日本文学教育センター 河合隼雄氏
 物語(を作らせる)療法
 箱庭療法              自分の物語をもう一度作らせる
 心の病(うつ病・ノイローゼ)から脱するには自分の物語を語らせる(自分と世界、自分と他人の距離がとれなくなっている。もう一度辿りなおす)
 徹底的に聞き役になって、物語を作り直させる。自分と世界の安定


 小説を読む・・・現実とは異なる文章により体験
 他人の人生を自分も体験する
 世界と主人公の関係により追体験・学び
 世界と自分を関係づける・意味づける=感動
 擬似的傷つかないで体験できる

 エンターテイメント
 面白さのレベル  古典・・・人間の創りあげるドラマは複雑
 本当に面白い小説・・・深くて面白さを持っている
 村上春樹・・・人間は二階建ての家(1階は家族の顔、2階は家族の個室 B1は普段は出ていない必要な物、深層心理、家を支えている)
 小説家はB1を描いていてはダメ。もう少し下の闇の部分に降りて
、戻ってきて表現できる人が物語を作って表現する作家。
 人間の闇の部分は小説にどうタッチしているのか、わかりやすい比喩で説明。
 プロット(筋)
 物語=すじ(プロット。ストーリー)
 歴史年表は事実を並べてある。が歴史年表作者の頭の中でプロットを考えている。
 昔の年表・・・人物・起こったこと
 今の年表・・・年表作家が頭に中でプロットを組み立てている
 プロット・・・現実を理解するために歴史家もプロットを作っている
 プロットを作ることは人間の主題であり、精神がある
 自分が救済されるために書いても、他に必ず救われる人がいる、そのために書いている
 本当に良いストーリーは自分たちの魂に呼応するものを持っている
 歴史家・・・誇大妄想ではない。主体的精神がない所に物語はない
 題名を付けるのがうまい人 宮本輝 「約束の冬」「睡蓮の永い眠り」「蛍川」「泥の川」
 辻原登・・・いつも悩む 村上春樹・・・「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」
 漱石・・・ヘタ、「彼岸過ぎまで」「門」「それから」
 高橋治・・・うまい「風の盆恋歌」、池澤夏樹・・・感心なし

Q.テレビドラマなど原作と全く違ってがっかり。文句は言えないのか?

A.文句は言えない。原作料を貰ったら後は何も言えない。「たそがれ清兵衛」は3つの作品を合わせて作ってある。

Q.週刊朝日の書評で藤沢周平さんの作品を純文学の域にまで高めたと読んだがどうか?

A.藤沢さんのどの本を取って言っているのか解らないが、藤沢さんは文章の飛び抜けてうまい人。
 今後50年後に、芥川賞直木賞受賞作品をおしなべてみても、美しい日本語という意味でその中から真っ先に選ばれる人である。
 時代ということを考えると、司馬遼太郎よりも高い位置にある人である。

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