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僻村塾記録       H15.9.25 於:望岳苑
対談 「なぜ小説を書くのか」 高樹のぶ子VS辻原登さん 
コーディネイター湯川豊さん 特別ゲスト高橋治さん  
 

辻原さん・・・大阪の高校の頃、サルトルの真似をして学校新聞に小説を連載をしていた。
     何をしたいか→受験勉強よりも本を読むこと・何かを表現することがしたい。
     当時は三浦雅士さんが弘前高校を出て「ユリイカ」を編集していた時代。
     お茶の水は大学を出ないで何かをするような雰囲気があった。
     全共闘・・・大学を拒否していた。
     19才から26才まで親のスネを囓りながら東京で「文芸」への投稿をしたりして生活していた。
     父が亡くなって、日中国交回復の時代で、夜間で中国語を2年勉強して商社に就職して14年。
     →文藝春秋に小説を持ち込み、読んだのが湯川豊さんだった。
     
湯川さん・・・「いぬかけて」文藝春秋編集長より引き継ぎ(辻原さんは「文芸」の佳作という紹介があった)
     商社員の時、書くことをあきらめていましたか?

辻原さん・・・いいえ、「村の名前」はその頃の体験、60才くらいの人の中国に対する蔑視。
     支えとして俺は物書きであるという自負を持っていた。 
     西園寺金一さん(オックスフォード出身)が商社の役員をしていた。
     西園寺さんに小説は書かないように言われていたので、絶対に小説は書かないと思わせながら書いていた。
     イギリスの第一次大戦・・・エドワード・レイ フライフィッシング

高樹のぶ子さん・・・文学界新人賞 「その細き道」35才 文学界3作目 1・2作目も候補になった。
     芥川賞・・・35才で受賞
     24才で結婚、28才で男子出生、30才で離婚  32〜33才で書き始める。
     在学中 太宰賞応募「火が消える」・・・消える瞬間の違う火の色、明るさ、滅亡の美を描いた。
     「その細き道」・・・下読みで面白いと沼省三の評
     「揺れる髪」・・・「文学界」に転載される。才能はないが集中力あり。
     離婚前後、男から男へバトンタッチされるのはイヤ。
     家政婦・設計事務所の事務3ヶ月・北海道旅行のキャッチフレーズを考えたりした。
     しきり屋のところがある。
     教材屋に4月に入社、5月から労働組合の婦人部長をする。胆嚢炎になる。

辻原さん・・・沼省三「家畜人ヤフー」の著者。「マゾヒストMの肖像」(沼省三論 著者不明)
     沼省三が文学界新人賞の下読みをしていた可能性あり。

高樹さん・・・「ナポリ魔の風」(文学界連載)を出版
     ナポリはいかがわしい恐い町、白木の大和文化には不可解な文化、石の文化。
     カストラ・・・去勢歌手 17Cからオペラの舞台には女性は登らず去勢した人が歌う。
     男の美の世界、女が入り込めない世界、暴力と血の匂い、美しい。
     女・・・産んで次の世代へ→どこかで健康に戻る。
     男は一代の性→どこかに狂う(芸術)。
     女は鑑賞するか、入れない。女が弾かれ逃げてしまう。
     三島・沼・渋澤・・・共通するものあり。怖さ・近づけない・コンプレックス。

なぜ小説を書くのか?

辻原さん・・・若い頃から読んでいるから、そして今も読んでいるから書く。
     小説を読む→書く 書くということは読んでいる
     近代小説 「ドンキ・ホーテ」・・・ 小説を読みすぎて書斎から飛び出す
     空想の世界と現実の区別がつかない。読んだ主人公になって冒険にでかける。
     ヴォバリー夫人・・・スカートを履いたドンキ・ホーテ
     書斎から出ていかないで、自分の物語を書く(狂気を芸術的なものに昇華させる)。
     水に向かってのみを振る。
     
高樹さん・・・作者が書くことを信じる。自分が創り出す世界に狂う→溺れる。確信犯的に狂う状態を保つ。
     世界の中の自分の位置を見てしまうと水没してしまう。狂い続けることが大切。
     客観的に見てもらえる目、シンクタンクがお二人。
     客観的な目がどこかに備わっている。
     新たに書くことについて、世界文学・日本文学の中で誰かやっている人がいるか。
     そこを押さえて書き始めたい。 
     
オリジナルとは何か?

     文学の伝統・・・その人の中に流れ込んでいるもの。文学史的知識は必要ない。
     技法上の問題はオリジナリティーが必要。
     小説の作り方→前代・前々代から学んでも流れ込んで行かない。言葉を駆使する才能が必要。
     小説・・・限りなく真実に近付きたい(リアリティーでなく)
     明治の官僚 フランフ・ロレーヌ地方のナンシーの森林学校へ留学した高島北海(得三)
     ガレにジェポニズムの影響を与えた人。クールな面・画家として日本人の矜持を持っていた。下宿の娘との恋
     全部を伝記として書いても捕まえられない→どうしたら小説にできるか?
     捕まえられると信じて書くことからしか始まらない
     書かれたもの全ては嘘 小説家の誠実さとは何か?→小説家に誠実さはない

高樹さん・・・美川町島清恋愛文学賞選考委員会の渡辺淳一氏・小池真里子氏とで宴会の後、句会になった。
     「この指を切って捨てたし秋の夜は」「すすきのに渡辺淳一ねこじゃらし」

俳句と短歌の違いは?

高橋さん・・・俳句は心のリズム・感性のリズムにいささかの形式が付いている
     四季の季語・リズムに内容が乗ってゆく
     「それにつけても金のほしさよ」・・・何につけても合う 現実 全部をひっくり返すことができる
     現実から逃避した世界。日本は環境が俳句的。
     日本人ほど信じられない数の詩人がいて新聞の一面にのる。ちょっと詩心のある人は俳句を残して行く。
     日本的な情緒・・・良い句が体に入ってきた時、実生活の痛み・喜び等が裏側にある。
     ススキの美しさを愛でるのと同時に味わっている。それが戯れ言を成立させている。
     辞世の句・・・5・7・5になっている→心の中に流れている
     リズムが数になる・・・危険・文化を揺すっている

     狂気を胸に宿している・・・島田清次郎のゆかり
                        ↑
                     狂気と正気の接点を持てなかった
     自分が抱えている狂気をそこまで飼って行けるのか、どこで手放すのか?
     あらゆる人に狂気という形で出すのか?
     泉鏡花  飼い慣らされた狂気に興味を持っていた

     「文学界」H16.1〜連載「ジャスミン」         
  

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