HOMEへ

僻村塾へ

僻村塾記録

 「千里幸恵とアイヌの世界」 池澤夏樹   H15.11.15 15:30〜 白峰村望岳苑

 事務局より
 今月号の「文学界」に池澤先生の特集あり。インタビューは湯川豊さん 
 8月に平成15年度宮沢賢治賞を「言葉の流星群」で受賞されたことの紹介があった
                                         
 知里幸恵は、岩波文庫「アイヌ神謡集」の著者で、一番若い著者。19才でこの本を書く。(1903−1922)明治36年生
 北海道登別生まれ 父母ともにアイヌで、叔母(金成マツ)祖母(モナシノーク)の影響を強く受ける。
 6才で旭川の近文へ引っ越し、キリスト教会を作る。
 優秀な成績で小学校を卒業、高等女学校を受験するが落ちる。成績は優秀だったがアイヌということで落とされたと考えられる。
 女子職業学校に入学、成績は4/112番。
 アイヌ語(母語)と和語が堪能で使い分けることができた。アイヌの話を覚える。
 1918(大正7)年、金田一京助が物語の採話のため訪ねて来る。アイヌの年寄りから話を聞いてまわる。
 幸恵の叔母と祖母にたくさんの話を採話して帰れなくなり1晩泊まったほど。
 幸恵にローマ字を覚えアイヌの話を記録するように進める。
 セイコウ会(イギリス国教会系)でローマ字になじみがあったが、耳で聞いた音をどう表現するか、なかなか難しい。
 一定のルールを作り、短い話からローマ字に置き換えていった。
 
 心臓が弱く、体が丈夫ではなかった。学校でもアイヌであることから勉強ができても孤立していた。
 最晩年の頃、ノートにかつてのクラスメート宛の架空の手紙を書いている。
 →ついにあなたたちとは友達になれない・・・。
 ローマ字で書き留めておいた物語を日本語に翻訳→金田一に送る→本になりそうだとの返事
 大正11年5月上京して金田一の手伝いをして神謡集にまとめる準備中、9月18日東京で亡くなる。
 幸恵の弟は一高から東大を出て、北大の教授である知里真志保氏。
 今年は幸恵の生誕100年にあたる。若くして亡くなり大きな仕事を残した人生は、樋口一葉を思わせる。
 残された者は、神様から仕事を頼まれてその仕事が終わったから呼び戻されたと考える。
 姪御さんが中心となって登別に知里幸恵の記念館を建設予定。

 アイヌとは、日本の北方に居住する先住民。
 和人(我々)が北へ勢力を広めることで次第に追いつめられる。
 始めは貿易から暴力支配・奴隷・風俗の禁止・言語の禁止・旧土人保護法・アイヌ文化振興法と変化。
 狩猟採集民は一歩先へ進めない劣った人々という見方がある。
 経済的理由で高校へ入学できない・アイヌであることを名乗らない人が多い。
 戦争中は一番先に徴兵され、危険な箇所に配置される。
 アイヌの人が勲章をよくもらうが、死ぬか勲章をもらうような過酷な場所に配置された。
 アイヌの人々の生き方は、略奪しない・自然と調和する生き方である。
 蝦夷鹿・鮭・山の実・木の細工物・織物・繕物・鮭の皮の靴など、必要な量だけ山の神様からいただく。

 バイカル湖周辺のモンゴロイド→大量の食物(鮭)→人工が爆発的に増える→ベーリング海峡を渡り南北アメリカへ。
 鮭の存在が大きい。
 物語・・・アイヌは文学の才能が大きかった。人から人へ伝える、最大数万人
 民族により得意・不得意がある。ロシア人は、絵は不得意だが音楽は得意。
 チャイコフスキーをはじめ、どんな田舎でも音楽になってハモれる。
 オーストラリアのアボリズムは絵が得意で岩に絵を描く。
 20万人の人口で80年くらい前からキャンバスに描くようになったが、人口の割に画家が多い。

 ユーカラ集・・・金田一が幸恵亡き後、引き継ぐ。
 文字以前の文学の方が優れていたのではないか?
 母の代から受け取り、必要な物を加え余分な物を省いて行くので深い物が伝わる。
 自然に対する敬意を覚える。小説は一人の人間の浅い知恵、一度読んで終わる。
 狩猟民は動物を詳しく知らないと採れない。来てくれて採れたことを感謝する。魂だけ帰ってもらう、敬虔な気持ちを持つ。
 農業は自然に対するリスペクト、農業を身につけるようになってから野蛮になった。
 備蓄できることで社会が安定し人口が増える。備蓄したものを戦争で取って来れる。
 送り儀礼・・・道具の霊を返す。生きていくためのルールを覚える。
 滑稽・英雄の話など「神謡集」に13のお話 シマフクロウ 銀の雫ふるふるまわる 金の雫ふるふるまわる・・・美しい文章。
 縁起の良いおめでたいきれいな話・下品な話・ユーモアのある話・新しい話はどこかに嘆きがある
 
 白峰は焼き畑農業・木の実・山菜・蚕・水田はない・・・米が通貨の時代には下の位に見られた
 農業に依存することだけが幸せではない、他の形がある
 アイヌはなぜ力を失ったのか?和人が蝦夷鹿を採ってしまった→美々に缶詰工場
 明治時代河口で鮭を一網打尽にして捕ってしまった。
 アイヌは人の分・クマの分・キツネの分を神様が贈ると考え必要な量しか捕らない。
 アイヌは話し合いで解決する、チャランケ。妥協点を探す・言い負かす
 川・山は誰の物でもない、所有の概念が成立しようがない
 和人が私有地(農業)→持ち主ができてしまう アイヌ・・・山の奥の使いにくい所
 強制労働で夫婦を別々に働かせる→子どもができない→民族を滅ぼす
 
 共同で使うべき物が個人の物になる 将来水がビジネスになる 途上国を大きな国、横取りし儲かる
 先住民の利権の回復の兆し 今までは誰のものでもない物は、見つけた人(国)の物
 オーストラリア アボリジニの人々・・・土地を所有していない 後からの法律で先の事を判断するのは間違っている
 川に戻って来る鮭を捕りたい・・・内水面漁業権ー土地の漁業組合の管理で勝手に捕れば密漁になる。
 日本では権利の回復はまだまだ。アイヌ文化のテーマパークは物になるかも。
 川一本を源流から河口まで生活文化ができる土地を返せれば何とかなるかも。
 
 知里幸恵はきれいな良い日本語を書く人だった。
 岩波文庫の赤い帯・・・翻訳物。外国文学に入っている。スタンダールやゲーテと一緒に。
 日本の古典は黄色の帯。沖縄の物・・・黄色に入っている。
 「神謡集」の序の文章は知里幸恵が一番言いたかったことが書かれている。滅び行く者という表現。
 議員萱野茂氏(平取村風谷の風俗アイヌ資料館長)により旧土人保護法が廃止された。
 アイヌと名乗らない人は名乗れる日が来るのか?
 別の意味で浅ましい方向へ流れて行く。
 (池澤さんの)先祖は開拓で北海道へ入る。開拓?侵略?
 アイヌ・沖縄・朝鮮半島から来た人々・・・多様性を持つことで豊になる
 「静かな大地」では自分の祖先の話、年表を作りイザベラ・バード(世界中を旅した人で、アイヌの人たちを心の広い気高いと書き残している)と出会う場面を作った。

 北海道は歴史が浅く伝統がなく色んな人が住んでいる・・・底が浅い・ざっくばらん
 沖縄と北海道は離婚率が高い・・・沖縄は家族制度がきちんとしているから・北海道は誰も止める人がいないから。伝統が生き方を規程していない。

 縄文人(沖縄・アイヌ)+弥生系(朝鮮半島)
             ←   ↑
              鉄・農耕・追い出して広い土地を手にした
 支配階級の顔(おひな様・弥生系) 縄文系(節分の鬼)
 アラスカのエスキモーとアイヌはよく似ている(どこそこの誰に似ているというレベル)
 アイヌ語の系統は解っていない、沖縄は日本の古語とほぼ同じ
 日本語も全く孤立しておりどことも似た言葉がない、言葉は変化が早い

 「旅をした人」で星野道夫が残したのは、アラスカの先住民の祖先を書いた。
 それ以上に一番書きたかったのは滅び行く、力を失って消えかけている(消滅したとは書いていない)喪失感。
 大事な物を壊してしまった。
 7年前星野道夫が死んで悲しんだ。中断した仕事の残った物を見てほしかった。
 アラスカの自然・文章・先住民・アラスカのくらし・昔風の物の値打ち・生き方を伝えようとする(星野の)仕事が中断してしまって、皆に伝えたかった。
 新作はないんだ、もう終わってしまったんだという気持ちが強い。あたりすぎてブームになってしまった。
 最近の写真展の構成が甘い写真ばかり、強いメッセージがない。雌を争う写真、血まみれの写真など。
 彼自身が伝えたかったのが喪失感。
 アラスカは500年何も変わらなかったが今は犬ゾリに乗るエスキモーはいない。みんなスノーモービル。
 最後を見た→残したかった
 ブッシュ共和党になってアラスカの油田開発の話が出ている。
 変わって行く、失われて行くアラスカ、止める方にいたい。
 変わるのは仕方がないが捨てる時に手の中をしっかり見て捨てなさい。

 Q「静かな大地」で一番よかったのは実学
 宗像三郎のモデル曾祖父の兄 新しい農業・牧畜を学ぶ(1年)
 指導者は自然相手の仕事だからマニュアルの社会から遠い所にある現場の学
 江戸時代の武士は軍隊ではなく官僚

 Q池澤さんにとって絵本はどういう位置にあるのか?
 親としてのつきあいしかない
 子ども4人 5才〜24才 20年くらいのつきあい
 「てぶくろ」は歴代のヒット 入学式で校長先生が「てぶくろ」のお話をした時に手を挙げて登場人物を全部言った子
 長い物をゆっくりよんでいる時間がない 「クマのプーさん」ディズニーの映画は下品
 「大工と鬼六」「百万回生きたねこ」 リストはなし 自分に合うか合わないか、子どもに合うか合わないか
 若い頃読んでよくなくても20年後・・・

 Q最初に池澤さんの名前を知ったのはテオ・アンデオクロスの映画の翻訳者として。
 テオとの付き合いが作品の中にどう影響?
 「旅芸人の記録」・・・世界の映画のリーダーの一人
 国境を越えることについて何回も話題にする 東ヨーロッパ・・・国境・民族・言語の境界は一致していない
 難民の子ども(ユーゴからギリシャへ)
 自分にとって境界とは何だ? バルカン半島に生まれ育ったので強く意識 国境・・・パスポート・お金・言葉・習慣
 日本・・・軍隊は来ない・他者を知らない 難民の受入・・・ドイツ2万人・イタリア・・・二千人 日本・・・26人

 豊臣秀吉はどれだけ悪い人ですか?朝鮮の方から質問
 国土・人種・言葉が一致しない 母国語・母語
 
 
home