「内なる島」リチャード・ネルソン著 星野道夫写真 星川淳訳

 「内なる島」を読んでいる。
 南東アラスカの多島海の中の島で、狩猟採集生活を送る著者の冒険に満ちた生活と、アラスカの豊かな自然が描かれている。
 亡くなるちょっと前に、星野道夫さんから一緒に本を作らないかと誘われていたそうで、星野さんが亡くなられてから実現した本。

 豊かな感性で南東アラスカの森や海や嵐の様子が描かれていて、手つかずの自然の中での鹿猟の様子、熊に出会った時、ハクトウワシの描写、荒れる波の砕ける音、誰もいない海でのサーフィンの様子等わくわくするような内容だ。

 星野さんの「森と氷河と鯨」の写真を思い出しながら読んでいる。
 その写真の場所で、実際に生活をしている人がいるということも不思議な気がする。
 森の倒木が地衣類に覆われて、自然に帰っていく様子など星野さんの写真で表現されている場所が言葉で表現されていて、文章もなかなか文学的でいい。

 訳者の星川さんも屋久島に住み、「屋久島の時間」を出版されている方。
 アラスカのフェアバンクスで開催された「アラスカ環境会議」で星野さんとこの本に出会ったこともあとがきに書かれている。
 星野さんと同じテーマで取り組んだ「ベーリンジアの記憶」という小説も書かれているとか・・・、読んでみたくなってきた。

 「内なる島」をようやく読み終えた。随分長い時間をかけて読んだ。
 星野さんの写真を文章で書いたのがリチャード・ネルソンと書いた。
 始めはそういう本だと思って読んでいた。鹿の肉を食料に長い冬のために狩猟をする。
 その鹿を撃つ瞬間の描写や嵐の日のハイダ湾の描写は、スゴイという一言に尽きる。
 しかし、それだけの本ではなかった。
 母を亡くした今、たまたま続きを読んだところに、妻のニータの母が長い癌との闘病生活の末に亡くなることが書かれていた。
 何故今この本のこの場所を自分が読むことになったのだろうか?
 不思議な天の配剤を感じる。
 さすがにこの場所を読むと涙が出た。なかなかいい本だった。

 
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