「ナヌークの贈り物」

 

 「ナヌークの贈り物」は1996年1月1日に初版が発行された。
 子ども向けに書かれたおはなしとシロクマの親子の写真で構成されている。
 
 「不思議な冷たい炎が生きもののように暗黒の空をかけまわっていた夜、ぼくはなにかに呼ばれるように歩き出した。」という書き出しで始まる物語。
 おじいさんからいつもシロクマは氷の王者で、人々は昔から王者をナヌークと呼ぶと教えられていた。
 いつか若者になったら、命をかけてナヌークと戦わなければならない日が来ることも。
 
 ナヌークは少年に語る。
 「おまえのおじいさんの最後の息を受けた風が
  生まれたばかりのオオカミに、最初の息をあたえたのだ。
  ー生まれかわっていくいのちたち」

 そして、おまえのおじいさんが祈っていたように消えていく命のために祈ること、その祈りがシロクマにも聞こえる人間の言葉だと。
 私たちは天地の一部で、少年が祈った時、少年はナヌークになり、ナヌークは人間になる。いつの日か私たちが氷の原野で出会った時に、
 「そのとき、おまえがいのちを落としても、
  わたしがいのちを落としても、
  どちらでもよいのだ」

 と語る。ちょうど亡くなられた年に出版された本で、まるで遺言のような言葉だ。
 この本のように星野さんはナヌークになったのかもしれない。  

2001.9.15

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