「家守綺譚」 梨木香穂著

 「家守奇譚」は不思議な物語だ。梨木さんの描く世界は「からくりからくさ」にしても「りかさん」にしても人形がqしゃべったりして、普通の世界ではない。「家守綺譚」では、その普通ではない世界を、さらに推し進めた不思議な物語が描かれる。時は明治の中ごろ、場所は滋賀県の大津あたり。
 文筆家を志す綿貫征四郎は、亡くなった親友の高堂の家守の留守番を高堂の父親に頼まれる。その家では不思議なことがおこる。深夜、床の間の掛軸の中の舟からボートを漕ぐ音がして、高堂が征四郎に会いにやってくる。庭の池の端に植えられたサルスベリの花に懸想されていると征四郎に忠告にやってきたのだ。本でも読んでやれという高堂の忠告に素直に従う征四郎。

 この本に描かれる世界は、人も自然も動物も植物も対等な感情を持ったものとして描かれ、それが違和感なく、懐かしいような不思議な気持ちにさせられる。
 梨木さんは1959年生まれで、50代の方なのだが、明治時代に書生を描くその筆力にちょっとショックを受けた。創造力でこんな物語が描けるのか・・・、作家という人種のはかりしれない大きさと深さを見せつけられた気がした。
 
 最新作の「沼地のある森を抜けて」では、ぬか漬けのぬか床から生まれた人々のさらに不思議な物語を書いている。梨木さんはこれからどんな方向に向かって行くのだろうか、とても気になる作家である。 

 

 

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