「闇の守人」
                

 上橋菜穂子さんの守人三部作を読んだ。
 「精霊の守人」、「闇の守人」、「夢の守人」の三作で、短槍使いの女用心棒バルサを主人公とする児童文学だ。

 「精霊の守人」は、目に見える世界「サグ」と目に見えない世界「ナユグ」が描かれる。ナユグの水の精霊ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)の卵を体内に生み付けられた、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムを、バルサが守る物語で、「闇の守人」はバルサが自分の過去と対決するため、カンバル王国に帰る物語だ。「夢の守人」は、呪術師トロガイとその弟子タンダが活躍する。
 児童文学だが、大人が読んでもなかなか面白い。

 バルサは30歳を過ぎた、目にふちにしわがあり、洗いざらしの衣服に身を包み脂気にない髪を後ろでくくっているような人物設定になっている。後書きに子どもたちに人気があるのは「精霊の守人」で、大人に人気があるのが「闇の守人」だと書かれていた。子どもたちは、自分たちと同年代のチャグムに自己投影し、大人はバルサに自己投影して読むのかもしれない。私も「闇の守人」の方が面白かった。

 バルサの父は、王位継承に絡む陰謀に巻き込まれ、王の槍だった親友のジグロにバルサの命を託す。ジグロは隣の新ヨゴ皇国に逃れ、刺客として放たれた同僚だった王の槍8人を倒す。 病気でジグロは亡くなり、バルサは25年ぶりにカンバル王国に戻る。

 貧しい国カンバル王国では、農作物もあまり収穫できず、20年に一度地下の山の王の国で行われるルイシャ(青光石)送りの儀式で送られる、ルイシャを売って穀物に変えることでカンバルの人々は生きている。
 その儀式でヒョウル(闇の守人)と、カンバル王国の王の槍との間で槍舞の儀式が描かれる。現実の世界と異界が関わり合いながら、影響し合いながら描かれる。
 

  チャグムの成長物語としても読めるし、バルサの自分探しの旅とも読める。
 物語性の他にも、深く読めば色々なことを考えさせられる。目に見えるサグと目に見えないナユグが描かれるが、実は私たちも自分たちがその世界を認識していないだけで、どこかに目に見えない世界が存在していないとは言い切れない。

 科学が発達しても、人間は植物や動物を作り出すことさえできないが、作家は物語の中で、言葉だけで一つの宇宙を作り上げてしまう。そして、それを読んだ読者が描くイメージが、一人一人微妙に違うところが面白い。アニメや漫画ではイメージが固定されてしまうが、本はイメージは一つだけではなく、いくつもあるのだ。
 
 
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